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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
これで、この写真のもう一人の奴を拡大して見ようと思ってね」
それは彼の商売柄、雑誌社で取次販売をしている実物幻燈器械であった。
そんなことをして確めるまでもないのだけれど、両人とも幻燈という様なものに、一種の魅力を感じている男であったし、拡大された相手の顔の皺の一本一本に、穿鑿的な興味がないでもなかった。
電燈を消すと、鳥の子の無地の襖の上に、写真の両品川の顔の部分丈けが、ギョッとする程大きく映された。
本当の品川は真面目顔、もう一つの方はニヤリと笑って、無修正の、ボタボタと斑紋をなした陰影が、暗闇の二人に向って、ニューッと迫って来る感じだった。
「僕一つ笑って見るから、あの写真の顔と比べてくれ給え」
品川はそう云って、器械の後部の光線の漏れている所へ、自分の顔を持って行って、寄席の怪談のお化けみたいに、ニヤッと歯を出して見せた。
「そっくりだよ。まるで、そうしている君の顔が、そのまま向うの襖へ映っている様だ」
愛之助は云っている間に、ゾーッと頸のうしろが寒くなった。
「君。もう止そうよ。何だかいやな気持になって来た」
愛之助は幻燈というものに、常々一種異様の恐怖を持っていた。