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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

であったが、雪子の面倒を見るからには妙子にもしてやった方が、と、かねて夫から云われていたくらいなのであった。で、折があるとそんな工合に云うのであったが、妙子はいつも何となく受け流して、決してその好意に縋ろうとはせず、謂われなく人の合力を求めるのは嫌であると云う、矜恃を持っているかに見えた。

奥畑との交際がその後どうなっているかについては、幸子にも雪子にもさっぱり様子が分らなかった。大方毎日欠かさずに蘆屋へ来ることは来るが、夕方から来て晩までいるか、朝から来て夕方ぷいと出て行ってしまうか、その孰れかでない日はないので、半日は必ず何処かで過すらしいのであるが、その間に啓坊と逢っているのだろうか、それとも相手は啓坊ではないのであろうか。―――と、二人の姉たちは内々で気を揉みながら、直接ぶつかって聞いて見ることはしなかった。姉たちの願うところは奥畑の婆やと同様で、こうなったからには矢張啓坊と一緒になって欲しいのであったが、短兵急に攻め立てるのは上策でないことを知っているので、そのうちには妙子の心境が変化してくれるであろうことを祈っていたのであった。と、ちょうどその時分、と云うのは十月の初め頃、或る日妙子が、奥畑が満洲へ行くかも知れないと云う噂を持って来たことがあった。