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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

雑誌社の方の関係でようよう明後日の分が取れる筈になっていること、なお当日は自分たち母子と、先日母からちょっと申上げた筈の御牧氏とがお附合いさせて戴くようになるであろうこと、尤も席は六人が一つ所と云う訳には行かないであろうこと、などを語った。

「どうもこんな御窮屈な所で、………おまけに此方側は日当りが悪くって不都合なんでございますが、これで御辛抱下さいますように。………」

光代は三人を部屋まで送って来て、預かった荷物をそこらへ置くと、直ぐもう出口の方へ行きながら、

「母は只今出かけておりますが、間もなく帰ります筈で、帰り次第お伺いすると申しておりました。………ではあたくし、これから社へ出て参りまして、又後程伺いますが、何ぞ銀座にお買物の御用でもございませんでしょうか。もしも御用がおありでしたら、何卒いつでもお電話下さいまし。………」

と、そう云って、

「電話はここでございますから」

と、寸の短い小さな手の、それでも人並に爪を真っ紅に染めてある指で、ハンドバッグから名刺を出した。

幸子は、髪のことが気になっていて、今日のうちに済まして置きたいと思ったのであるが、自分も雪子も夜汽車で疲れていることを考えると、今日は余り無理をしないで、体を休めた方がよいような気がした。