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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
以前の彼女はこんな場合に少しぐらい疲れていても参ったような顔をせず、二人の姉を放って置いても元気よくそこらへ飛び出すと云う風であったのに、近頃だんだん昔のような溌剌さがなくなり、ややともすると所構わず足を投げ出したり、肘枕をしたり、溜息をついたり、持ち前の行儀悪さが一層ひどくなったのは、まだ健康が本当に回復していないのかも知れないが、反動的に太り過ぎたので、何をするにも大儀なのであるらしく思えた。
「雪子ちゃんも、少し横になりなさいな」
と、幸子は云ったが、雪子は、
「ふん」
と云いながら、今迄妙子が占拠していた、脱ぎっ放しの羽織がふわりと懸けてある安楽椅子へ、その羽織をそっと取り除けて、これはきちんと帯も解かずに腰をおろした。この部屋にはベッドが二つしかないのであるから、夜はダブルの方へ妙子と二人で寝るより仕方がないけれども、ダブルと云っても正式のより小型のものなので、さしあたり妙子の傍へ這い上って行く気にはなれず、かと云ってもう一つの方は幸子のために遠慮したつもりなのであったが、横になっている妙子よりも、彼女の方がいつかとろとろと寝入ってしまった。
幸子は雪子の心づかいが分ったのかどうか、やがて空いている方の寝台に上って見たが、雪子がひとり椅子に掛けたまま寝入っていて、彼女も妙子も寝られないので、