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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

「何仰っしゃるのよ、今ここで裸体になれますか」

「何卒々々、―――その間われわれは廊下へ出ておりますよ」

「そんなことどうだっていいじゃないの、御牧さん」

と、光代が助け船を出した。

「そんなにママをおいじめになるもんじゃなくってよ」

「そう云えばこいさんも、この頃はよく和服をお召しになりますのね」

と、井谷は辛うじて身をかわした。

「狡いな、胡麻化しちまっちゃあ」

「はあ、近頃はこいさんも、洋服よりは和服を着る方が多くなって参りましたの」

「うちもだんだんお婆さんになった証拠や、云われてますねん」

と、幸子のあとから妙子が、無雑作に大阪弁で云った。

「でもそう云っては失礼だけれど、―――」

と、光代は妙子の絢爛な装いを見上げ見おろしながら、

「こいさんはきっと洋服の方がお似合いになるんじゃないか知ら、和服だって決してお似合いにならない訳じゃないけれども。―――」

「光代さん、お話の最中ですが、こちらのお嬢さんは妙子さんと仰っしゃるんだと伺いましたが、『こいさん』と仰っしゃいますのは?―――」

「まあ、御牧さんは京都人の癖に『こいさん』を御存知ないんですか」

「『こいさん』と云う言葉は、大阪だけのようでございますね。