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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

もと和蘭陀語のマンプウから出たのだそうで、左様に発音する人もあるが、京阪地方では一般に訛って、お春が云ったように云う。阪神国道の西宮市札場筋附近の北側には、省線電車と鉄道の堤防が東西に走っており、その堤防に、ガードと云うよりは小さい穴のような、人が辛うじて立って歩けるくらいな隧道が一本穿ってあって、それがちょうどそのバスの停留場の所へ出るようになっている)お春は最初に顔が合った時、挨拶したものかどうかと思って躊躇していると、奥畑の方からニッコリして帽子を取ったので、此方もついお辞儀をした。二度目の時は、バスが孰方もなかなか来ないで、長い間待たされているうちに、向う側に立っていた奥畑が何と思ったか線路を越えてノコノコ傍へやって来て、お春どん、よう君に遇いまんなあ、何ぞこの辺に用事でもありまんのんかと、声をかけたので、実はこれこれでございましてと、暫く立ち話をした。奥畑はひとりニコニコして、そうだっか、この近所に来てなさるのんか、そんなら一遍僕所へ遊びに来給え、僕所はあのガードを越えた直きそこです、―――と云いながら、そのマンボウの入口を指して、―――君、一本松知ってなさるやろ、僕所はあの一本松の傍やよってに、直き分ります、是非やって来給え、と云って、まだ何か話したそうにしていたが、そこへ野田行きのバスが来