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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

自分の意地を何処までも通す。お母さんが分らないことを言ったからって、それで泣き寝入りになるような人でない。来る気さえあれば屹度来てくれる」

と新太郎君は秀子さんの我儘と意地っ張りに多少辟易しているものゝ、この際それが頼もしかった。

そこへ母親が上って来て、

「新太郎や。あらまあ、お前、鏡と睨めっこをしているの?」

と見たまゝを口にだした。

「いゝえ、考えているんです」

「お前未だ諦めなくても宜いのよ。私が取越し苦労をして少し言い過ぎたんですから」

「万事成行きに委せます」

「然うして下さい。私達も決して悪いようにはしませんから」

「分っています」

「私は又、お前が余り静かだものだから、心配になって見に来たのよ」

「大丈夫ですよ。ハッハヽヽヽ」

と新太郎君は景気好く笑った。

しかし一日二日と暗い日が続いた。元来秀子さんが貰える積りでの改心だから、見込が立たなくなると、直ぐにぐらつき出す。

「困った婆だなあ」

と寛一君も一部始終を聴いて歎息した。

「何うだね? 君の判断は」

と新太郎君は寛一君が唯一の相談相手だ。

「兎に角、長いね、これは」

「纒まりがかい?」

「纒まるにしても、破れるにしてもさ」