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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

現に父親からの申込を快く受け入れて、時機を待っているという。問題はお母さん丈けだ。未だお目にはかゝらないが、あの電話の調子から察するに、余程ネチ/\した婆さんらしい。しかし婆は婆、秀子さんは秀子さんだ。秀子さんが来てくれる意思があるなら、婆の反対を押えるために百方策を繞らせても、決して不見識にはならない。頑冥なものを啓発するのは文化事業の一つだ。

「これは少々気が早かった。えて物が反対したか何うかも分っていないのに」

と思って、新太郎君は微笑んだ。お父さんの病気で、未だえて物へは持ち出してないのだ。宮地さんの聞き込んで来たところは一般論に過ぎない。

「羅紗屋の息子には娘はくれられない」

と言ったのではないのだから、えて物は取消す。婆も取消す。依然として先方のお母さんだ。そのお母さんの意向は未だ白紙である。此方が突然電話をかけて、羅紗屋だと言ったものだから、洋服屋さんですかと早合点をしたに外ならない。それぐらいの考え違いは誰にもある。顔の見えない電話だもの。

「未だ諦めるに及ばない。秀子さんはあの通り我儘だ。気に入らないことがあると、此方があやまるまで堪忍してくれない。