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だっせんむすこ

脱線息子

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年7月~1928(昭和3)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,293 字 · 221 页

青空文庫

丹波さんの診察室で洩らした怖い/\ガ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)ナーの微笑で運命が定った。西川さんは転んでも唯起きない商人だ。神経衰弱になって転地するにも副産物のことを考えていた。新太郎君の逗子の宿は先頃見て来て気に入っている。これから行って同宿を頼む。

「新太郎め、迚も溜まるまい。否応なしに帰って来る」

と思ったら、覚えず頬の筋肉が弛んだのである。

家へ戻って、

「如何でございましたの?」

と細君に迎えられた時、西川さんは未だニコ/\していた。

「新太郎と同じ病気だったよ」

「まあ! 神経衰弱? そんなお年をして?」

「爺さん扱いにしなさんな。西川さんはお若いと言って同業のものが褒めてくれる丈けのことはある」

「兎に角大したことでなくて宜うございました」

「安心したよ。成程、この間から丁度遊び頃の容態だと思った」

「新太郎ばかり小言は言えませんわね」

「いや、新太郎のは偽物だよ」

「いゝえ、あなたの遺伝ですわ」

「でも俺の方が後だ」

「出たのは後でも下地があったんですわ」

と細君は例によって新太郎君の為に弁じた。悪いことは皆良人の側の遺伝に定めていたが、唯一つ説明のつかなかった神経衰弱も果して然うと今日唯今初めて分ったのである。