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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
そこへゆくと、君なんか、いつも呑気でいいね。」
「それもまあ、酒飲みの特権みたいなもので、あまり自慢にはなりません。」
北村は唇を噛んだ。心にもないことを言ったものだと自分でいやになったのだ。そして言いなおした。
「それとも、画家の性分かも知れませんね。」
それでも、まだ、しっくりしなかった。
松本は黙っていたが、やがて言いだした。
「取越し苦労ばかりでなく、どうも、僕の方の心境にもいけないとこがある。家の者たちにとって、僕が重荷になっているのではないかと、そのように感ずることがあるよ。僕が重苦しく、みな僕を敬遠しているのではないかと、そのように感ぜられるのだ。なるべく僕を避けようとしている。僕が出て行くと、賑かな空気は薄らいで、やがて一人ずつどこかへ逃げてゆく。そしてもう僕という者には無関心だ。彼等の眼の前に僕がいさえしなければ、それでよいのだ。そのくせ、富子は些細なことまで僕に相談して、僕の指図を受けなければ、自分一人では何事も決断出来ない。子供たちも、富子に相談して、お父さまに聞いて下さいと言う。万事の重荷を僕一人に背負わせるのだ。その重荷を背負った僕が、一方ではまた逆に、皆を重苦しくさせている。