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がいとうからみたしんとうきょうのりめん
街頭から見た新東京の裏面
杉山 萠円
「九州日報」1924(大正13)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,546 字 · 178 页
がこの「顔パス」の利き眼を一層高める意味を持っていたことは明らかである。
もっともこのパスは彼等の器量に応じて通用の範囲も大小があるが、いずれにしてもこのパスが利く限り、彼等はどこへ行っても肩で風を切って歩けた。言葉を換えて云えば、この「かお」というパスが、彼等の精神的、又は物質的の生活の安定をドン底まで保証していた。維新後も同様にして今日に及んだので、昔ほどのことはなくとも、この習慣が残っていたには間違いない。
そのパスがアッという間に灰になってしまった。パスが焼けたのではない。パスの利くところが無くなってしまった。タンカを切っても、眼玉を剥いても、だれも相手にしなくなった。
こうなると彼等はスッカリ意気地がなくなってしまう。彼等は、今まで軽蔑し切っていた宵越しの銭をためる連中と一所に、往来に並んでお救い米を貰わなければならなかった。焼けたトタンを以って乞食小屋を作らなければならなかった。そうして何でもかんでも喰うために働かなければならなかった。引き続いて地震がガラガラと来るたんびに、彼等はとりあえず宵越しの喰い物を準備しなければならなかった。