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がいとうからみたしんとうきょうのりめん
街頭から見た新東京の裏面
杉山 萠円
「九州日報」1924(大正13)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,546 字 · 178 页
そのバラックの連中は大いに驚きあわてて吏員と争ったが、吏員はドシドシ屋根めくりを強行したので、訴えるとか何とかいうことになった。この納まりがどうなったか聞き洩らしたが、その最初にメクラれたのが、堂々たる江戸ッ子の、しかも問屋の屋根であったことは記憶している。
記者は避難民のこの態度を憎むものではない。又当局のヤリ口を賞めるものでもない。これは震災後に於ける、一時的の気分のあらわれでなければならぬ事は無論である。しかしこのバラックの中に居る人々の中に、大和民族の代表的性格を体現した、あの「江戸ッ子」が居ようとは、どうしても信じられないことを悲しむのである。
あれだけの侮辱を受けながら返事もし得ないで、只お金だけ溜めたい、自分の趣味だけを満足させるだけで満足して生きて行きたい、一日恥を忍べば一日だけ得だという亡国的の根性を、これ程までに罵られてだまっている意気地なさ……日本中の或る一部の人種ならいざ知らず(うっかりすると大部分かも知れぬが)、すくなくとも江戸ッ子としては忍び得ないところであろうと考えられる。
それがそうでないのだから呆れざるを得ない。