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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

岡田は何事も弁えず、又それを知ろうと云う好奇心を起す暇もなく、今まで道の真ん中を歩いていた足を二三歩その方へ向けた。

大勢の女の目が只一つの物に集注しているので、岡田はその視線を辿ってこの騒ぎの元を見附けた。それはそこの家の格子窓の上に吊るしてある鳥籠である。女共の騒ぐのも無理は無い。岡田もその籠の中の様子を見て驚いた。鳥はばたばた羽ばたきをして、啼きながら狭い籠の中を飛び廻っている。何物が鳥に不安を与えているのかと思って好く見れば、大きい青大将が首を籠の中に入れているのである。頭を楔のように細い竹と竹との間に押し込んだものと見えて、籠は一寸見た所では破れてはいない。蛇は自分の体の大さの入口を開けて首を入れたのである。岡田は好く見ようと思って二三歩進んだ。小娘共の肩を並べている背後に立つようになったのである。小娘共は言い合せたように岡田を救助者として迎える気になったらしく、道を開いて岡田を前へ出した。岡田はこの時又新しい事実を発見した。それは鳥が一羽ではないと云う事である。羽ばたきをして逃げ廻っている鳥の外に、同じ羽色の鳥が今一羽もう蛇に銜えられている。