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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

女はちょっと考えて、「あの元結ではいかがでございましょう」と云った。

「結構です」と岡田が云った。

女主人は女中に言い附けて、鏡台の抽斗から元結を出して来させた。岡田はそれを受け取って、鳥籠の竹の折れた跡に縦横に結び附けた。

「先ず僕の為事はこの位でおしまいでしょうね」と云って、岡田は戸口を出た。

女主人は「どうもまことに」と、さも詞に窮したように云って、跡から附いて出た。

岡田は小僧に声を掛けた。「小僧さん。御苦労序にその蛇を棄ててくれないか」

「ええ。坂下のどぶの深い処へ棄てましょう。どこかに縄は無いかなあ」こう云って小僧はあたりを見廻した。

「縄はあるから上げますよ。それにちょっと待っていて下さいな」女主人は女中に何か言い附けている。

その隙に岡田は「さようなら」と云って、跡を見ずに坂を降りた。

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ここまで話してしまった岡田は僕の顔を見て、「ねえ、君、美人の為めとは云いながら、僕は随分働いただろう」と云った。

「うん。女のために蛇を殺すと云うのは、神話めいていて面白いが、どうもその話はそれぎりでは済みそうにないね」