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がん
雁
壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页
「届くことは届くが、中るか中らぬかが疑問だ」と、岡田は答えた。
「遣って見給え」
岡田は躊躇した。「あれはもう寐るのだろう。石を投げ附けるのは可哀そうだ」
石原は笑った。「そう物の哀を知り過ぎては困るなあ。君が投げんと云うなら、僕が投げる」
岡田は不精らしく石を拾った。「そんなら僕が逃がして遣る」つぶてはひゅうと云う微かな響をさせて飛んだ。僕がその行方をじっと見ていると、一羽の雁が擡げていた頸をぐたりと垂れた。それと同時に二三羽の雁が鳴きつつ羽たたきをして、水面を滑って散った。しかし飛び起ちはしなかった。頸を垂れた雁は動かずに故の所にいる。
「中った」と、石原が云った。そして暫く池の面を見ていて、詞を継いだ。「あの雁は僕が取って来るから、その時は君達も少し手伝ってくれ給え」
「どうして取る」と、岡田が問うた。僕も覚えず耳を欹てた。
「先ず今は時が悪い。もう三十分立つと暗くなる。暗くさえなれば、僕がわけなく取って見せる。君達は手を出してくれなくても好いが、その時居合せて、僕の頼むことを聴いてくれ給え。雁は御馳走するから」と、石原は云った。
「面白いな」と、岡田が云った。