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がん
雁
壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页
充たされないものかと商量したりする程の、緻密な思慮は持っていなかった。
突然塀の外に、かちかちと拍子木を打つ音がした。続いて「へい、何か一枚御贔屓様を」と云った。二階にしていた三味線の音が止まって、女中が手摩に掴まって何か言っている。下では、「へい、さようなら成田屋の河内山と音羽屋の直侍を一つ、最初は河内山」と云って、声色を使いはじめた。
銚子を換えに来ていた女中が、「おや、今晩のは本当のでございます」と云った。
末造には分からなかった。「本当のだの、嘘のだのと云って、色々ありますかい」
「いえ、近頃は大学の学生さんが遣ってお廻りになります」
「失っ張鳴物入で」
「ええ。支度から何からそっくりでございます。でもお声で分かります」
「そんなら極まった人ですね」
「ええ。お一人しか、なさる方はございません」女中は笑っている。
「姉えさん、知っているのだね」
「こちらへもちょいちょいいらっしゃった方だもんですから」
爺いさんが傍から云った。「学生さんにも、御器用な方があるものですね」
女中は黙っていた。
末造が妙に笑った。「どうせそんなのは、学校では出来ない学生なのですよ」