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がん
雁
壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页
向いの岩崎の邸の事なんぞを思えば、同じ内にいるようなものだぜ。今からだって、行こうと思えば行けるのだが、まあ、あすの朝にするが好い」
お玉は火箸で灰をいじりながら、偸むように末造の顔を見ている。「でもいろいろと思って見ますものですから」
「笑談じゃないぜ。その位な事を、どう思って見ようもないじゃないか。いつまでねんねえでいるのだい」こん度は声も優しかった。
この話はこれだけで済んだ。とうとうしまいには末造が、そんなにおっくうがるようなら、自分が朝出掛けて来て、四五町の道を連れて行って遣ろうかなどとも云った。
お玉はこの頃種々に思って見た。檀那に逢って、頼もしげな、気の利いた、優しい様子を目の前に見て、この人がどうしてそんな、厭な商売をするのかと、不思議に思ったり、なんとか話をして、堅気な商売になって貰うことは出来まいかと、無理な事を考えたりしていた。しかしまだ厭な人だとは少しも思わなかった。
末造はお玉の心の底に、何か隠している物のあるのを微かに認めて、探りを入れて見たが、子供らしい、なんでもない事だと云うのであった。しかし十一時過ぎにこの家を出て、無縁坂をぶらぶら降りながら考えて見れば、どうもまだその奥に何物かが潜んでいそうである。