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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

と繰り返した。

「誰だって好いじゃありませんか。本当なんだから」乳房の圧はいよいよ加わって来る。

「本当でないから、誰でも好くはないのだ。誰だかそう云え」

「それは言ったってかまいませんとも。魚金のお上さんなの」

「なにまるで狸が物を言うようで、分かりゃあしない。むにゃむにゃのむにゃむにゃさんなのとはなんだい」

お上さんは顔を末造の胸から離して、悔やしそうに笑った。「魚金のお上さんだと、そう云っているじゃありませんか」

「うん。あいつか。おお方そんな事だろうと思った」末造は優しい目をして、女房の逆上したような顔を見ながら、徐かに金天狗に火を附けた。「新聞屋なんかが好く社会の制裁だのなんのと云うが、己はその社会の制裁と云う奴を見た事がねえ。どうかしたら、あの金棒引なんかが、その制裁と云う奴かも知れねえ。近所中のおせっかいをしやがる。あんな奴の言う事を真に受けてたまるものか。己が今本当の事を云って聞して遣るから、好く聞いていろ」

お上さんの頭は霧が掛かったように、ぼうっとしているが、もしや騙されるのではあるまいかと云う猜疑だけは醒めている。それでも熱心に末造の顔を見て謹聴している。