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がん
雁
壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页
ある。根津で金のいるものは事務所に駈け附ける。吉原でいるものは出張所に駈け附ける。後には吉原の西の宮と云う引手茶屋と、末造の出張所とは気脈を通じていて、出張所で承知していれば、金がなくても遊ばれるようになっていた。宛然たる遊蕩の兵站が編成せられていたのである。
末造夫婦は新に不調和の階級を進める程の衝突をせずに、一月ばかりも暮していた。つまりその間は末造の詭弁が功を奏していたのである。然るに或る日意外な辺から破綻が生じた。
さいわい夫が内にいるので、朝の涼しいうちに買物をして来ると云って、お常は女中を連れて広小路まで行った。その帰りに仲町を通り掛かると、背後から女中が袂をそっと引く。「なんだい」と叱るように云って、女中の顔を見る。女中は黙って左側の店に立っている女を指さす。お常はしぶしぶその方を見て、覚えず足を駐める。そのとたんに女は振り返る。お常とその女とは顔を見合せたのである。
お常は最初芸者かと思った。若し芸者なら、数寄屋町にこの女程どこもかしこも揃って美しいのは、外にあるまいと、せわしい暇に判断した。しかし次の瞬間には、この女が芸者の持っている何物かを持っていないのに気が附いた。