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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
午後から水道の水が出だした。もっとも低い場所だけらしいが、どんなに嬉しく思ったか知れぬ。初めから水道のない国だったら、この嬉しさは味わえず、またこんなに不自由をしなかったのだ。
植木屋の人足がやっと四人来てくれて、振り落された瓦の破片や土塊の取り片つけに着手する。
北埼玉郡国納なる妻の従弟日下部彦太君が、はるばる自転車で白米二升を持って見舞に来てくれた。大阪を始め各地から白米多額輸送の評判のみ高くてもまだ市場には売り出さず、麦飯や玄米飯を補充に用いているさいのこの賜は何よりも嬉しかった(追記。彦太君は帝大生で、前途に嘱望せられた青年であったが、この日雨を冒して東京の親戚まわりをした後に間もなく病気にかかって、十月三十一日帝大病院でついになくなられた。何という気の毒なことであろう)。夜十二時ごろかなりビックリさせるほどの強い奴がやって来た。
夜警は依然として続く。夜九時より後は往来を禁止するとのことが新聞記事に出た。焼け残った『報知』や『東京日日』が出だしたので、いくぶん正確な様子もわかり、人気はだんだん落ち付いて来たとは言うものの、なかなか戦時気分を脱しそうにもない。