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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
あまりに高いので、今一軒の店で買わしたところが、そこでは一升五十銭の割合だった。
これも遠からぬ所のある八百屋では、さっそく芋一貫目一円、茄子三個十銭に値上げしておった。後に新聞の報ずるところによると、近所の某親方がそれを憤慨して、茄子十七個十銭で売り出したので、その家でもたちまち十二個十銭に値下げしたが、平素の得意先から不買同盟の制裁を受けたという。
右は自分が直接体験した二個の事実に過ぎないが、かかる徒輩のわが市民中に少からぬのは浅間しいことだ。政府もこれに鑑みてさっそく暴利取締令を発布し、警視庁から特に各警察署に訓示するところがあったと見えて、秩序もやや立って来た十一月に、自分の近所では巡査が一々売値段を調べて廻ったものだ。人民保護のお役目まことに感謝に値する次第ではあるが、さてその取締方がきわめて徹底的なものだった。自分の宅の前で梨子売の婦人が一個七銭三個二十銭で売っていた。いくぶん高いかとは思いながらも、このさいのことではあり、自分の宅でも別に不満足にも思わず買ったのであったが、取締りの警官はそれが高いとあって、その婦人を打擲して商品を踏みにじった。