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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
と挨拶をする。香油に光る髪が一握程、狭い額に垂れ掛かっている。
金鎖がこんな事を云う。「こないだは内の子供等が有楽座へ見に行って、帰ってから君のお噂をしていましたよ。大相面白かったそうで」
「いえ未熟千万でございまして。しかしどうぞ御閑暇の節に一度御見物を願いたいものでございます」
純一は曽根の話に、新俳優が来ていると云ったことを思い出した。そして御苦労にもこの俳優の為めに前途を気遣った。俳優は種々な人物に扮して、それぞれ自然らしい科白をしなくてはならない。それが自分に扮しているだけで、すでにあんな不自然に陥っている。あのまま青年俳優の役で舞台に出たら、どうだろう。どうしても真面目な劇にはならない。Factie である。俄である。先ずあの声はどうしたのだろう。あの男だって、決して生れながらにあんな声が出るのではあるまい。わざわざ好い声をしようと思って、あんな声を出して、それが第二の天賦になったのだろう。譬えば子供が好い子をしろと云われて、醜い grimace を見せるようなものだろう。気の毒な事だと思った。
こう思うと同時に、純一はおちゃらがこの俳優に対して、どんな態度に出るかを観察することを怠らない。