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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
「サア、手伝って下さい」
音吉が云うままに、二郎はその袋に手をかけた。二人がかりでやっと持上る程の、重い袋だ。
「音吉、これは一体何だ、この袋の中に這入っているのは」
二郎は震え声で尋ねた。
「多分、わたしの想像していたものです。併し、あなた、この中を見る勇気がおありですか」
二郎は袋を放り出して、いきなり逃げ出し度い様な気がした。
「もう一度、明りをつけて下さい」
二郎が又ライターに点火すると、その淡い光の中で、音吉は袋の口を解いた。そして、底の方を持って、一振り振ると、袋の口から地面へ、ゴロゴロと転がり出したものは、……
大方それと察していた二郎も音吉も、実際その切り離された人間の腕や足を見た時には、思わずアッと叫んで、飛びのいた。
「人形ではなかった。やっぱり、生きた人間だった」
二郎が上ずった声で云った。
「そうです。あれは人形ではなかったのです」
音吉は、彼もやっぱり、さっきの美人解体術を見ていたかの様に、合槌を打った。
「で、一体、これは誰の死骸なのだ」
「それを確めなければならないのです」
二郎と音吉とは、じっとお互の目を睨み合った。二人共、調べて見るまでもなく、死骸の主を知っているのだ。