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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
無論撃つつもりはない。ただ賊と対等の立場を得る為だ。
だが、アア何という恐ろしい奴だ、怪物はそれを見ると、ゲラゲラ笑い出した。
「ハハハハハハハ、お撃ちなさい。その女が死んだところで、わしは少しも痛痒を感じない。イヤ、却って御礼を申上げ度い位のものだ」
「だが、君は、僕がこれを撃てば、娘さんが傷つくばかりではない。その銃声で外にいる警官達が飛込んで来ることを、勘定に入れていますか」
明智が初めて口を開いた。彼の目は憎悪に燃えている。野獣にも劣る極悪人の態度に、彼は流石に激昂しないではいられなかった。
「無論、それに気附かぬ私ではない。何百人の警官が這入って来ようと、君がその娘を殺せば、わしの手助けをしたも同然だ。君もわしの一味として捕えられなければなるまい。ワハハハハハハハ。明智君、まあ気を静めて、その女の顔を見るがいい」
それを聞くと、明智は何かしらギョッとしないではいられなかった。彼は淡い光の中で、縛られた娘の全身を眺めた。変だ。はっきり記憶していないけれど、どうも服装が違う様だ。だが、それが一体何を意味するのだ。たった二三分の間に、ここでどんなことが起ったというのだ。