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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
悪魔は、醜く顔を歪めて、毒々しく笑った。彼のピストルは、素早く妙子の脇腹にくっついている。形勢は一転して、今度は明智の方がおどかされる立場になった。
あとで分った所によると、その日、玉村妙子は、もう傷口も殆ど癒えたので、退屈の余り、病室を出て、病院の庭を散歩していたが、ちょっと看護婦が目を離している間に、どこへ行ったのか、姿が見えなくなってしまった。
夕方になっても、帰らぬので、玉村邸へ電話をかけると、無論邸へは来ていないという返事だ。そこで、警察へ届けるやら、捜索隊が八方に飛ぶやら、大騒ぎとなったが、その時分には、当の妙子は、とっくにこの海岸の一軒家へさらわれて来ていた。
先に、賊の住家の玄関脇の一室に、棺桶の様な長い箱が置いてあったことを記したが、妙子はその中にとじこめられていたのだ。そして、明智達が奥の方へ這入って行った留守に、賊の手下の奴が、柱に縛られていた文代と、棺桶の中の妙子とを、手早くすり替えてしまったのだ。名探偵の裏をかいて、アッと云わせてやろうという、例の魔術師の虚栄心である。
「素敵素敵、さすがは魔術師程あって、あざやかなものだね。