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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
夜会巻きの美しい女が出て来る。ある男の愛妾だ。その二人の色っぽい場面が幾つも現われる。
この女には、幼馴染の情夫がある。それが主人のいない折を見て、忍んで来る。不義の幾場面が巧みに描かれる。
だが、ある時、遂に主人が、この忍男を発見する。すさまじき憤怒の形相。煩悶懊悩の痛ましい姿、彼は真底から女を愛していたからだ。
彼は、併し、何気ない体で、伝手を求めてその忍男と近づきになる。女の主人は四十歳位、忍男は五つ六つ年下だ。二人とも妻も子もある立派な暮しをしている。
恨みを包んだ不気味な笑顔。相手の真意を計り兼ねてビクビクしている不安の表情。
女の主人は、その奇妙な交際を続ける一方では、とある広い邸を買入れて、そこの地下に、煉瓦造りの穴蔵の様なものを作らせる。買入れた邸というのは、牛原氏のこの邸だ。地下の穴蔵というのは、今一同が映画を見ている、この地下室だ。
この頃から、見物達の頭に、不気味な錯覚が起り、映画と現実とが不思議な交錯を始める。
画面では、職人の手で穴蔵が殆ど完成する。あと半坪程、煉瓦の壁が残っているばかりだ。主人は、どういう訳か、そこで仕事を中止させて、職人達を帰してしまう。