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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
僕だって、命は惜しいですからね」
明智はそう云いながら、ポケットからピストルを出して、相手に狙いを定めた。
「畜生ッ」
源造は、又しても先手をうたれて、地だんだを踏んだ。併し、ピストルを持つ相手に飛びかかる訳にも行かぬ。
「サア、文代さん。外へ出ましょう。僕達はまだ仕残した仕事があるのです。お父さんですか。ナニ、お父さんは暫くこの部屋で御休息願うことにしましょうよ」
明智の言葉に、文代はオズオズと立上って入口へ近づいた。
「コラ、文代、貴様親を裏切る気か」
源造の恐ろしい目が、刺す様に睨みつけた。
「お父さん。私も一緒に牢屋へ行きます。死刑になる運命なら、私も一緒に死にます。どうか堪忍して下さい」
文代は泣きながら、父をあとに残して部屋を出た。明智はそのドアへ、外から鍵をかけた。(鍵はさい前、ピストルと一緒に手に入れて置いたのだ)流石の源造も、相手が飛道具を持っているので、どうすることも出来なかった。
「サア、君はこれを持っていて下さい。そして、奴等が手向いし相だったら、構わずぶっ放して下さい」
明智はピストルを文代に渡して、部下の者を捕縛する為に、甲板へ出て行った。