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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
ということで、福田氏も実はそれを考えていたものだから、早速その晩、実行することになった。
二郎青年は、約束通り一睡もせず、日が暮れるとから、懐中電燈を用意して、福田氏の寝室の窓の外の庭だとか、扉の外の廊下などを、一晩中歩き廻って、厳重な見張りを続けた。
「猫の子一匹、塀の中へ這入ったものはありませんでしたよ。どうです。まさか昨夜は紙切れは来なかったでしょう」
朝になって、叔父の部屋へ這入った二郎は、「それごらんなさい」と云わぬばかりに、得意らしく尋ねた。
だが、これはどうだ。福田氏は又新しい紙切れを持っていたではないか。
「これをごらん。ちゃんといつもの通り毛布の上に置いてあった。わしも今夜こそ正体を見届けてやろうと思って、一睡もせぬつもりでいたんだが、明け方近く、ついトロトロとした隙にこれだ。実に不思議な事もあるものだよ」
で、今朝の紙切れには、順序に従って、「八」と記してあった。福田氏の想像によれば「もうあと八日しかないのだぞ」という恐ろしい意味を含んでいる。
そうなると、新青年の二郎も、やや本気になって、それから福田家に泊り込み、書生などにも手伝わせて、二晩三晩、曲者の正体を見届けようと努力したが、遂に何の発見する所もなかった。