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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
一体全体何をする積りであろう。
明智はやっぱり慌てもせず、ノソノソと賊のあとからおりて行く。
見ると、源造は、真暗な船底で、しきりとマッチをすっていたが、やがて、パッと燃え上ったのは、油のしみた布屑だ。彼はそれを片手に掴んだかと思うと、一隅に置いてあった箱の中へ、ヒョイと投げ込んだ。
「アッ、危いッ。爆発薬です」
文代の絹を裂く様な叫声。
そこには賊の最後の武器が残っていたのだ。悪魔は絶望の極、恨み重なる明智を道づれに、船もろとも、我身を粉微塵にしようと決心したのだ。まことに一代の兇賊にふさわしい最期と云わねばならぬ。
だが、アア何というみじめなことだ。滑稽千万にも、肝腎の爆薬が、いつまでたっても、線香花火ほどの音さえ立てぬではないか。
「それを僕が見逃がして置いたとでも思うのですか。触ってごらんなさい。火薬は水びたしですよ。ホラ、ここにあるこのバケツで、海の水を一杯、さい前ぶっかけたばかりです。いつまで待っても、爆発なんかするものですか」
恐ろしい名探偵が、とどめをさした。
「アア、俺は、俺は……」
源造は気違いの様に、我が髪の毛をかきむしった。そして、いきなり明智に武者振りつき、