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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
世にかくまで無残な死に方があるだろうか。明智は見るに耐えなかった。明智でさえそうなのだ。娘の文代が、余りの恐ろしさに気絶したのは決して無理ではない。
彼女は父の断末魔に接し、その血みどろの形相を一目見るや、ウーンとのけぞって、そのまま気を失ってしまった。
と同時に、明智のうしろの、ドアの側にも、別のうなり声が聞え、バッタリ人の倒れる音がした。驚いて振向くと、そこにも、気を失って倒れている女性があった。妙子だ。ただならぬ騒ぎをききつけて、彼女はいつの間にかここへ忍び出て来たのだ。そして、敵ながら、源造の恐ろしい苦悶を見て、脳貧血を起したのだ。
明智は当惑してしまった。一人は死に瀕し、二人は気を失って、三人三様の姿で、ぶっ倒れている。しかも、明智の為に手を貸してくれる人とては、誰もないのだ。
当惑して佇んでいる内に、魔術師源造は遂に動かなくなってしまった。足をふんばり、手は宙を掴んだまま、青ざめた蝋人形の様にほし固ってしまった。藍色に近い死相と、その上を網目に流れる鮮血が、ゾッとする程物凄く見えた。
部屋の中には、動くものとては何一つなかった。文代と妙子は死人も同然だし、当惑して立ちつくしている明智まで、生人形の様に動かなかった。