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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
云われて見ると、一郎も二郎も、段々思い当る所があった。実の妹と信ずればこそ、別に疑いもしなかったものの、考えて見れば、妙子の挙動には、日頃どことなくおかしい点がないでもなかった。
明智は説明を続ける。
「妙子が賊の娘であったとすれば、今までどうにも解釈の出来なかった、様々の不可思議がたちどころに氷解するではありませんか。犯人はいつも家の中にいたのです。いくら厳重に戸締りをし、見張りをつけても、実の娘が犯人なのだから、防ぎ様がないのです」
「分りました、では、僕達を妙子に会わせて下さい。直接あれの口から聞き度いのです。妙子は定めし波越さんの手で捉えられているのでしょうね」
二郎が、明智の説明を、もどかしげに打切って尋ねた。
「そうです。波越君は、妙子を捉えて、あちらの部屋で待っている筈です。そこには妙子の外に意外な共犯者や、さっき云った元看護婦のお婆さんなども、呼びよせてあるのですよ」
明智は云いながら、もうその方へ歩き出した。
意外な共犯者
玄関脇の客間風な一室に、いつの間にか明々と電燈が点ぜられ、その光が廊下まで流れ出していた。その中から甲高い女の声が、漏れ聞えていた。