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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
すると、アア、彼は又しても怪文字に出くわしたのである。
今度は進一少年が発見者だった。二郎が探しあぐんで、やっぱり気のせいだったかと、稍々安堵を感じながら自分の部屋へ戻って来ると、そこに進一少年がいて、彼が這入るなり声をかけた。
「小父さん、こんなにカレンダーめくってしまって、いたずらだなあ。今日は十一月の二十四日でしょう。それに、十二月六日だなんて」
云われてそのカレンダーを見ると、なる程6という字が大きく現われている。
「進ちゃん、君だね。こんないたずらしたのは」
二郎は笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
進一がそんな悪さをしないことは分っていた。無論、何者かがその部屋に忍込んで、例の数字を書く代りに、カレンダーを破って、6という字を示して置いたのだ。前二回は屋外であったのが、今度は屋内のしかも二郎自身の部屋だ。魔術師の様な怪物は、誰にも見とがめられず、自由自在にこの邸内を歩き廻っているのだ。二郎はもう黙っている場合ではないと思った。
翌晩日の暮れ暮れに玉村氏の自動車は、京浜国道を大森の自邸へと走っていた。東京の店からの帰りだ。二郎もこの車に父と同車していた。