轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くろとかげ

黒蜥蜴

江戸川 乱歩

「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页

青空文庫

T公園といえば、その地域の広さ、日々呑吐する群衆のおびただしさでは、大阪随一の大遊楽境であった。立ち並ぶ劇場、映画館、飲食店、織るがごとき雑沓、露天商人の叫び声、電蓄の騒音、子供の泣き声、数万の靴と下駄とのかなでる交響楽、蹴立てる砂ぼこり。そのまん中に、パリのエッフェル塔を模した通天閣の鉄骨が、大大阪を見おろして、雲にそびえているのだ。

ああ、なんという大胆不敵、なんという傍若無人、女賊「黒トカゲ」は、選りに選って、この大歓楽境のまっただ中、衆人環視の塔上を、身代金授受の場所と定めたのであった。このお芝居気、この冒険、あの黒衣婦人でなくてはできない芸当である。

岩瀬氏は神経の太い商人ではあったけれど、いよいよ賊と対面するかと思うと、胸騒ぎを禁じ得なかった。彼は少しばかり固くなって塔上へのエレベーターにはいった。

エレベーターの上昇とともに、大阪の街がグングン下の方へ沈んで行く。冬の太陽はもう地平線に近く、屋根という屋根の片側は黒い影になって、美しい碁盤模様をえがいていた。

やっと頂上に達して、四方見晴らしの展望台に出ると、下界ではそれほどでもなかった冬の風が、ヒューヒューと烈しく頬を打った。