轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
すると、ああ、はたして、椅子の中から、陰にこもった声が答えたのだ。
「僕は影法師のように、君の身辺をはなれないのだよ。君の作ったからくり仕掛けが、大へん役に立ったぜ」
地の底からのように、或いは壁の中からのように響いてくる。その陰気な声が、黒衣婦人を思わず身ぶるいさせた。
「明智さん、怖くはないのですか。ここはあたしの味方ばかりですよ。警察の手のとどかない海の上ですよ。怖くはないのですか」
「怖がっているのは、君の方じゃないのかい……フフフフフフフ」
まあ、なんて気味のわるい笑い方をするんだろう。椅子から出ようともしないで、平気でいる。奥底の知れない男だ。
「怖くはないけど、感心しているのよ。あなたに、どうしてこの船がわかりましたの」
「船は知らなかったけれど、君のそばにくっついていたら、自然とここへくることになったのだよ」
「あたしのそばに? わかりませんわ」
「通天閣の上から君に尾行することのできた男は、たった一人しかなかったはずだぜ」
「まあ、そうだったの? すてきだわ。ほめてあげますわ。売店の主人が明智小五郎だったのね。あたし、なんて間抜けだったのでしょう。