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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
その信号によって、刑事たちはなんなく地底にはいることができたのだ。そして入り口をはいると同時にそこの見張り番の北村を適当に処理したまでのことであった。内部から明智が手伝ったことはいうまでもない。さっき、しばらく、潤ちゃんが行方不明になっていたあいだの出来事だ。では、彼らはなぜすぐさま、「黒トカゲ」の逮捕に向かわなかったのか。それは、この捕物を充分効果的にするための、明智の指図であった。刑事とて、洒落を解せぬ朴念仁ばかりではないのである。
いうまでもなく別の一隊は、水上署と協力して海上の賊船に向かっていた。もう今頃は、「黒トカゲ」の部下たちは、汽船もろとも一人残さず召捕られていることに違いない。
地底の賊徒も、たちまちにして、刑事たちのピストルの前に頭を下げた。さしもに獰猛な荒くれ男どもも、この悪夢のような不意打ちには、どう手向かいするすきもなく、ことごとく縄をかけられてしまった。まっぱだかの潤ちゃんも例外ではなかった。だが、首領の「黒トカゲ」だけは、さすがに敏捷であった。まっ先に背広人形の意味を悟った彼女は、逃げ足も早く、一人の刑事につかまれた腕を振り切って、飛鳥のように、廊下の奥の彼女の私室へ逃げこんで、中から鍵をかけてしまった。