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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
明智もそのうしろから、ソッとのぞいて見たが、早苗さんは向こうをむいて、スヤスヤと眠っていた。
「早苗はこのごろ、わしと同じように毎晩カルモチンを呑むので、よく寝入ってます。それに、今夜は気分がすぐれぬといっていましたから、かわいそうです、起こさないでおきましょう」
「窓はしめてありますか」
「それも大丈夫、昼間から、すっかり掛け金がかけてあります」
岩瀬氏はそういうと、もうベッドの上に這いあがっていた。
「明智さん、恐縮だが、入り口をしめて、鍵はあんたが預かっておいてくださらんか」
彼はもう、眠いのが一ぱいで、鍵をかけるのも面倒なのだ。
「いや、それよりも、僕はしばらくこの部屋にいましょう。寝室のドアはあけたままにしておいてください。そうすれば、あなたがおやすみになっても、窓のがわはここから見えますから、もしだれか窓を破って侵入してきても、すぐにわかります。窓さえ注意していれば、ほかに出入り口はないのですから」
明智は一度引き受けた事件には、あくまで忠実であった。彼はそのまま居間の方の椅子に腰をおろして、煙草に火をつけて、じっと寝室を監視していた。
三十分ほど経過したが、何事も起こらない。