轻松读懂日语经典作品
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くろとかげ
黒蜥蜴
江戸川 乱歩
「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页
ときどき立って行って寝室をのぞいて見たが、早苗さんは同じ姿勢でねむりつづけている。岩瀬氏も高いびきだ。
「あら、まだ起きていらっしゃいましたの。ボーイが、さっき妙な電報がきたといっていましたので、気がかりになって、あがってきたのですけど」
声におどろいて振り向くと、半ばひらいたままになっていたドアのそとに、緑川夫人が立っていた。
「ああ、奥さんですか。電報がきたにはきたんですが、こうしていれば大丈夫ですよ。僕はばかばかしい見張り役です」
「では、やっぱりこのホテルへまで、おどかしの電報がきたんですか」
黒衣の婦人は言いながら、ドアをひらいて部屋の中へはいってきた。
読者諸君はもしかしたら、「作者はとんでもない間違いを書いている。緑川夫人は早苗に化けて、岩瀬氏の隣のベッドに寝ているではないか、その同じ緑川夫人が、廊下からはいってくるなんて、まったくつじつまの合わぬ話だ」と抗議を持ち出されるかもしれぬ。
だが作者は決して間違ってはいない。両方ともほんとうなのだ。そして、緑川夫人はこの世にたった一人しかいないのだ。それがどういう意味であるかは、物語りが進むにしたがって明らかになって行くであろう。