轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くろとかげ

黒蜥蜴

江戸川 乱歩

「日の出 第三巻第一号―第十二号」1934(昭和9)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,633 字 · 215 页

青空文庫

すぐに出かけることにしよう。約束は十時かっきりなんだから」

老人がせき立てるので、葉子は大いそぎで、ぬぎ捨てた洋服を丸めて、トランクに押しこんでおいて、階段を降りた。

煙草屋を出て、少し行った大通りに、一台の自動車が待っていた。さいぜん乗ってきたタクシーではない。やっぱり、ボロ車ではあったけれど、運転手はなかなか立派な男で、老紳士とも知り合いらしく見えた。

二人が乗りこむと、指図も待たず、車は走り出した。街燈の明かるい大通りを幾曲がりして、やがて暗闇の郊外に出た。

「来ましたが、時間はどうでしょうか」

運転手がうしろを向いてたずねる。

「ウン、ちょうどいい。かっきり十時だ。さあ、あかりを消したまえ」

運転手がスイッチをひねると、ヘッド・ライトも、テイル・ライトも、客席の豆電燈も、すべての電燈が消え去って、闇の中を、闇の車が走るのだ。

程もなく、自動車は、どこかの大きな邸宅のコンクリート塀にそって徐行していた。半町おきほどに立っている常夜燈の微光によって、わずかにそれと知られる。

「さあ葉子さん、用意をして、素早くやるんだよ。いいかね」

老人が競技選手を力づけるようなことをいう。