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さんごくし

三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 頁

青空文庫

二

「それは偶然ではありますまい。むかし殷馗というて、よく天文に通じていた者が、群星の分野を卜して、この地かならず賢人の淵叢たらん――と予言したことは、今も土地の故老がよく覚えていることだが、要するに、ここは大江の中流に位し、蜀、魏、呉の三大陸の境界と、その中枢に位置しているため、時代の流れは自らここに人材を寄せ、その人材は、過去と未来のあいだに静観して、静かに学ぶもあり、大いに期するもあり、各※(二の字点、1-2-22)現在に処しているというのが実相に近いところであろう」

「なるほど、おことばによって、自分のいる所も、明らかになった気がします」

「――そうじゃ、自分のいる所――それを明らかに知ることが、次へ踏みだす何より先の要意でなければならぬ。御身をこの地へ運んできたものは、御身自体が意志したものでもなく、また他人が努めたものでもない。大きな自然の力――時の流れにただよわされてきた一漂泊者に過ぎん。けれどお身の止った所には、天意か、偶然か、陽に会って開花を競わんとする陽春の気が鬱勃としておる。ここの土壌にひそむそういうものの生命力を、ご辺は目に見ぬか、鼻に嗅がぬか、血に感じられぬか」