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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

お前が、毒を飲んで死ぬなどと、そうして、笑っているお前が――」

斉興は、独り言のように呟いた。

「拝顔仕りましてより六十年、夢と思えば夢、長いと思えば、飽き飽きする程、長うござりました」

調所は、立ったままで、平然として、人事のように、朗らかであった。

斉彬は、七八人の若侍を前にして、自分の写真を、見せていた。若侍達は、次々に、斎彬の写真を回覧しながら

「筆では、こうは描けん」

とか

「よく、似ておりますな」

とか――斉彬と、写真とを、見較べてみたり、陽のさして来る方へ、透かしてみたりしていた。

「異国には、もっと、不思議なものがある。十里も、二十里も離れていても、便りができる。一刻の間に――」

人々は、斉彬の笑顔を凝視めたまま黙っていた。

「電信機、というもので、今、わしは、それを造らしておる。わしは、異国の事物を、悉くも感心はせんが、よいものを、益々、よくして行くという点には、及ばんと、思うておる。日本人には、それがない。支那人にもない。例えば、釈迦の後に、釈迦は出ない。孔子祖述者は、皆孔子以下じゃ。然るに、洋学は、その創始者より、次の代の者、その者よりも、近頃の者と、だんだん、その学文が研究され、究理されて、日進月歩しておる。