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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
「仙波っ」
広岡が、又、叫んだ。小太郎は、ほんの瞬間に起った刃の閃き、人々の格闘を、自分に関係の無い人々が起したように、眺めていたが、広岡が、つづけざまに、来援を求めた叫びを聞くと
「おお」
と、答えた。人々は、夢中に、組み合っていたが、久光は、小太郎の返事を聞くと同時に、ちらっと、小太郎を見た。その眼と、小太郎の眼とが、ぶつかった。久光の眼の表情は、怒りと、驚きと、恐れとの混じたものであった。小太郎は、それを見ると同時に、編笠を捨てて、お叩頭をした。
(討つべき人ではない)
と、感じた。それは、武士としての、本能的な、主君に対する感情であった。
「仙波っ」
右手の、自由を失った広岡は、三人に組みつかれて、脚をよろめかし、手を振上げ、身体をもがいて、闘っていた。
(不覚だ。ああいう、斬込み方をするなど、何故、近侍を一人倒しておいてから、斬りつけぬ?)
小太郎は、不用意な襲い方をして、すぐ、自分に、援けを叫んでいる広岡に、憤りたくなった。
久光は、手綱を捌いて、鞍へ、落ちつくと共に
「手に余らば、斬れ」
と、云って、馬を走らせて行った。広岡は、それを見もしないで