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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「まごまごするねえっ」

「済みません」

口早に、いって、もう七八間も離れて、振向きもせずに行く吉公へ

「待てっ」

と、商人が、叫んで

「泥棒っ」

駈け出そうとする商人へ

「この野郎っ」

庄吉は、左手で、袖を掴んだ。

「泥棒たあ、何んでえ」

町人は、庄吉の手を掴んで、振切りながら

「そいつ、捕まえてくれっ」

と、叫んで、走り出した。庄吉は

(誰か、品物を受取った子分の奴がいるだろう)

と、四辺を眺めたが、それらしいものが居なかったし、吉公が、渡した様子も無かった。庄吉は

(掏ったものを、持っていちゃ、駄目じゃねえか)

と、吉松の後方へ、怒ってみた。それと同時に、自分を助けてくれた吉松へ、役人の指でもかけさせたら、仲間へ顔出しが、出来んと、思った。

(俺は、金さえ、お二人に渡しゃ、少々、痛められてもいい身体だが、吉を痛める訳にゃあ行かねえ――余計なことをして、心配させやがる)

庄吉が、走り出した時には、往来の人々が、町人の方を眺め、町人が

「そいつ」

と、叫んで、指さす方を、眺めていた。両側の家の中から、若い男が、走って出たり、顔を出したりして

「巾着切か」

「泥棒か」

と、叫んだり、眼を見合せたりしていた。