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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

そして、これへと侍に命じ、そこで介を待ったのだった。

おそらくは、ひそかに、事の不成就を、胸にえがいていたのではなかったか。

もしこのさい、ここへもたらしてくる介の報告が、かねがねの切望を裏切って――持明院統の皇による院宣降下の不成功を告げるものであったら――どうなるか。それは、はなはだまずいものになる。

時も時だ。大きなうつろを味方にまねき、ひいては、他日の結束にも亀裂を生じまいものではない。「と、なっては一大事」として、尊氏もそこで介を待つ間は、吉か凶かに、肋骨もいたむような胸騒いをいだいていたにちがいなかった。

「…………」

やがて侍の声がし、介だけが、そっとそこへ入って来て、平伏した。

例の雲水姿である。だが髪もひげも伸びに伸びて、乞食僧のように疲れはてた影は、尊氏の目もいたむほどだった。

「おう、介か」

「申しわけもございませぬ」

「なに、申しわけがない?」

「余りにも日時をついやし、それに今日まで、何らのお便りもつかまつらず……」

「あの乱軍つづき。しかもそちは都の中だ。いちいち仔細の連絡がとれぬなどは仕方もない。それよりは、結句、どういう情勢か。