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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

私本太平記

瘧

瘧

妙な噂が立った。

それも宮中からである。正成諫奏の直後だった。

「河内守が乱心した」

「いや気鬱の程度だとか」

「何、そうでない。君前にてあるまじき狂語を吐き、ために謹慎を命じられたものだそうな」

「さよう。自分の聞いたところもそれに近い」

と、いったような臆測まじりの風聞だった。

公卿目、公卿耳

と、よくいわれる。

宮廷人の間には、その環境からも特有な感覚をみなもっていたらしい。正成の諫奏は、内容が内容だけに、そのおりの侍座以外には、かたく口を封じられたが、それですらもうこのていどには六位ノ蔵人、外記、内記あたりの者にはささやかれていた。

事実、あのとき。

逆鱗はたしかであった。

いかに御心では、

「笠置いらいの正成」

と、特別なおいたわりはあらせられても、あまりな正成の直言には、おむねも痛く、はては御不快を禁じえなくなられたにちがいない。――正成をのこして、ついと謁見の御座をお立ちになってしまった御気色にみても、お腹立ちのほどは充分に窺われる。

すぐあとについて、坊門ノ清忠たち列座の公卿も、みかどのこもられた昼の御殿へと、ぞろぞろ伺候して行った。

しかし彼らは、正成のために、逆鱗をなだめようとしたわけではなく、むしろ正成の罪科かろからずとみて、