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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
献言
「…………」
そこで、彼はちょっと、目をとどめた。駒寄せ桜の下に丸腰の男が低く腰を折っていた。治郎左衛門元成だった。が、水の中から上げた顔のように元成の目は濡れていた。正成もまた、無言だった。いうところはなかったのであろう。軽い駒足はたちまち彼を赤坂城の門へ運んでいた。
正成は、即日ここを立って、まず京都へ向った。天皇にお別れをつげるために。――また正季は、なお河内、和泉の遅れた兵を召集して、兵庫への途中で兄の正成と合流する約になっていた。
献言
都の内は暑かった。
もう夏景色といっていい。
が、雨期は低迷気味で、薄日照りのムシムシする日がつづいていた。――正成は五月十九日入京のむねを御所へ届け、一たん六条の宿所へさがって、召の御指示を待ちかまえていた。
すぐ朝から達しがあった。「二十一日早朝に罷れ」との内示である。
同日、その場からただちに兵庫へ出勢すべしとの朝命とみてまちがいはない。もとより万端の準備に欠けている正成ではなかった。けれど彼はなお、その一日を、
これでいいか。
ほかにみちはないか。
と、河内を出るときから固めていた心がまえにもさらに反復をかさね、あらゆる思慮をめぐらしていた。