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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
密々に正成どのへ近づきたい」
「始終、御用をうけたまわっているおとくい先。いつでもお供はいたしますが」
「とうに先では忘れていようが、六年前、龍泉殿(正季の屋敷)の武器庫の土用干しに、ひと夏、雇われていったことがある。――正成どのと会わぬうちに、そのときの具足師柳斎と、他に見やぶられてはまずいのだ」
「ようござんす」と、鳶七はのみこんだ。
「――じつあ楠木家からも、物具の繕いがたまっているから諸職の職人二、三十人よこせといわれていたんです。だがここのとこ、手不足なので、まだ十人ほどしかやっておりません。至急、あと一ト組を連れてゆくことにしますから、その仲間に交じってお出でなすっては」
「たのむ」
介は深くあたまをさげた。
何かよほどな彼の使命らしい容子がそれにもみえる。もちろん尊氏の密命たるはいうまでもない。
その日、僧服をぬいで、彼は一個の職人に姿を変えた。あたまは、あれからも伸び放題な蓬髪だった。それを渋染の布で粽頭巾にしてつつむ。
いたって、のん気な旅にみえた。鳶七が連れた職人は十人ばかりで、中に交じって行ったのである。介は元々、具足師で飯をたべてきた者だし、職人気質にそつはなく、誰あやしむ者もなかった。