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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
まったく人目のおそれない山中へかかると、身なりはどうであれ、彼は、本来の武士一色右馬介に返り、その人になりきっている。
いつか千早川の水音もうしろに消え、下赤坂もはるか下だった。金剛の長い山裾は石川から河内平へかけてまで、模糊と、すべて天地いちめんが春の陽炎と化している。
「お。……おちつこう。これからは大役だ。自分には荷がかちすぎるほどな大役」
介は、ひと息ついた。
ひんやり汗が沈む。自然、山のしじまが彼に物思わせる。
わけてこんどは主の尊氏から「介! そちには多年のあいだ、縁の下の力持ちばかりさせて来たが、おそらくはこんどを以て、そんな蔭の働きも、働き仕舞いと思うてよかろう。それほどな大事だぞ、しかと頼む」と、あのお主にしてもめずらしいほど沁々とした仰せ付けをうけて来たことでもある。
「……果たして、そのお望みが、成るか成らぬか」
彼は自分を知っている。自己の器量があやぶまれた。主の尊氏でさえが、当代唯一の人物と観ているほどな正成にたいして、よくその人を説得して、尊氏の意のあるところを徹底させるほどな力がこの自分にあるかどうか……。
「思えば、足利家に武士も多いが、おれほど奇道から奇道をあるいた者はいない。