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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

ここに再度追ッついてその男を見つけたのだから「――野郎っ」とばかり間髪も措かなかったのは当然でもある。

しかし、本来の武士一色右馬介と、放免上がりの大蔵とでは、ここでも格段な腕力の違いがすぐ出てしまった。――あッと、大蔵の巨体もしたたか地を打って転び、また猛然と突ッかかっては行ったものの前よりも遠くへ、でんと、再び投げとばされていた。

「よさぬかっ、大蔵」

正成に抑えられて、初めて、彼はその片肱で顔を横にこすった。顔半分、柘榴のようにスリ剥けていたのである。

「なんで――」と大蔵はなお息まきながら「おやかた様には、このうさんな人間をそうお庇いなされますか」

「おちつけ。さほどな曲者でもあるまいゆえ」

「いいや、敵方の諜者か刺客に相違ございません。具足職人のひとりに化けて下赤坂へ入り込んでいた奴が、いつのまにかこんな山中へ来ているなどは、てッきり殿をつけ狙ッていたからのことで、ゆめ、御油断はなりませぬ」

「案じるな大蔵。いささか思うところもあれば、あとは正成にまかせて帰れ」

「滅相もない」と、大蔵は一方の曲者以上にも正成のその言を怪しんで「――万一でもあったら、てまえの役目が立ちませぬ。