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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

「どうぞ、あとはお案じなされますな。いつまでもお待ちいたしておりまする」

「安心している。征旅に立つ身にとって、あとを安んじて行けるほど心づよいことはない」

「でも、その御安心を身に担うて、よいお留守をしているには、まだ、久子には何か力が足りませぬ」

「そうでない。そなたも凡の女ではあろうが、しかし正成が日ごろにいうてあることだけは、よくわかってくれておるようだ。それでよいのだ。またの出陣となっても、あらためて申すことは、ひとつもない」

「ですが。……あの、いま申してもよろしゅうございましょうか」

「なにかまだ」

「はい」

「いうたがよい」

「せっかくお寝みのおさまたげになってもいけませんが、あすとなっては」

「正行のことか」

「きょうも独り泣き暮れておりまする」

「この父に、戦に連れて行けと申すのだったな」

「正行にせがまれて、この母も共に、ぜひこのたびは初陣にと、きのうもお願いいたしましたが、待て、考えておこう、と仰っしゃったきりなので」

「明朝、そなたからよう諭せ。このたびは留守していよと」

「では、かないませぬか」

「こんどは初陣の童子などをつれて行けるような生やさしい戦ではない。