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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

けれど、新領の武士は、まだ必ずしも、楠木家と運命を共にするとまで、ふかく結ばれている者どもではない。いわば新領主の下に、ぜひなく併合されただけのものだ。――折ふし、尊氏の優勢が、日ましに世上へ流布されているときでもある。彼らが、なかなか腰を上げて来ないのも、道理である。無理はない、と季綱はいうのであった。

「叔父御は」

と、正季は苦笑した。

「いつか、わが兄上に似ておいでられたな。そんなことは正季にもわかっています。……けれど、御戦はなんのためだ。まこと、この国の武士なら、みかどの御楯、一身の利害などは、かえりみてもいられぬはず……」

正季の意気はちっとも変っていない。元弘の若公卿が説いていたような高い理念を、いよいよ胸に磨いでいた。だから腹が立つのであった。ふだんでも人をみれば、この国の皇統をほこり、勤王の道を力説していた。――それが、かえって、人を遠ざけ、近ごろの武士気質からは、一徹なかたくな者と見られがちな点なども、彼は全然、意にかけていなかったのだ。

――さて。それらはともかく、彼が枚方から対岸へ渡ったのは、そこの西国街道で、兄正成の軍を待つためだったが、まだ正成の兵馬は見えない。